眼鏡の女性

振り返ってみると、不思議なことに眼鏡をかけた女性に惹(ひ)かれる傾向がある。中学・高校生時代、金沢八景の自宅から船越の栄光学園に通学していたが、朝、バス停で時々一緒になる眼鏡を掛けた女性に惹かれていた。結局、一言も話す機会はなかったが、色白で理知的な雰囲気が魅力的だった。大学に入り、サークル活動で多くの他大学の学生と知り合った。その中の一人の眼鏡を掛けた女性が好きになった。K大やR大など私学の友人は女性に対して上手に付き合う術(すべ)を心得ており、その女性にも自由に話し掛けたりしていたが、私は男子校で育ったせいか、女性に対して意識過剰になり、態度がぎこちなくなった。特に意中の女性に対しては、自然に振る舞うことができず、悶々(もんもん)としていた。反対にその女性は、生き生きと誰に対しても素直に自分を出している姿が誠に美しく思えた。ある時、そのサークルの懇親会の席上で、私はまだ飲み慣れないビールをがぶ飲みして目が回ってしまい、その場にしばらく寝込むという醜態を彼女の前でさらした。結局、彼女とは、まともにつき合いもできずに終わってしまった。三人目の眼鏡の女性は、米国カリフォルニア大学留学時代に現れた。香港から社会福祉を勉強に来ている学生だった。留学生用の寮の食堂で知り合った。小柄で人なつこく、ちょっと厚手の眼鏡を掛けていた。大学のキャンパスには金髪の女性もたくさんいたのに、日本のどこにでもいそうな、東洋の眼鏡の女性にどうして惹かれてしまったのだろう。二人は結構仲良く交際したが、私の帰国で中断した。その後、彼女から結婚したという便りを受け取ったが、今では住所も不明になった。もう一度会えたら、どんなに懐かしいことだろう。アメリカから帰国後しばらくして、見合いをし結婚したが、彼女は意外にも眼鏡なしだった。すばらしい女性だったのに、老眼鏡を掛ける年齢になる前に、ひとり早々とあの世へ逝ってしまった。


 
横須賀市長 蒲谷亮一

 

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